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ひとりから始まったIT開発の新たな挑戦 ~前編~
「AIをやってください」
当時の専務だった福田光秀社長から言われた一言が、アイフルグループのIT分野をさらに加速させるきっかけをつくった、すべての始まりです。
世は第三次AIブーム…。その背景のもと、IT開発の開拓に向けて声をかけられたのが、金融機関向けの保証を行う部門に所属し、それまでITとは無縁だった山下卓也さんでした。
なぜ山下さんはIT開発に携わることとなったのか、その後に取り組んだ申込フォーム刷新の裏側や学生との繋がりを築いたハッカソンのことなど、これまで社員にもあまり知られていなかったグループのIT変遷における“あの時”を、IT開発の挑戦を繰り返してきた山下さんを基点にインタビューや対談などを通して振り返ります。
シリーズ第一弾・第二弾は、アイフルグループのITに関わる山下さんの歩みをご紹介します。
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山下卓也さん
1994年入社後、営業店勤務を経て、教育部(現・人材開発課)や労務課など人事関連の業務に従事。その後、法人管理部や保証事業部などにも所属。2018年からIT業務に携わり、ハッカソン企画やアイフル申込フォームの刷新などに携わる。現在はセブンシーズ株式会社・取締役。
「AIをやってください」
AIをやってください—。
それが私のITキャリアを歩むきっかけとなった一言です。
私は1994年に新卒で入社しました。入社した後は営業店から始まって、その後は人事部門や管理部門など、だいたい2~3年サイクルでいろんな部署への異動を経験しましたね。そして、私が保証事業部にいた2017年頃は機械学習・AIブームの真っただ中…。その時、専務だった現・福田社長が「アイフルをIT企業にしたい」と話していました。それでAIスコアリングやチャットボットなどの導入案が挙がっているなか、社長から言われたのが「AIをやってください」という一言で始まる、異動辞令でした。
IT構想について社長の話を聞く機会がよくあったんですよね。当時、グループとしてIT部門はあったのですが、社長が考えるITの方向と違い、別の形で進めたかったんですかね(笑)。
もちろん、それまでIT分野に携わった経験などはなかったんですよ…。ただ、私自身の異動が多くて1から仕事を覚えることには慣れていたんで…。だからIT分野に対しても特に抵抗はなくて、むしろITには少し興味があったくらいですかね。出張で愛媛から広島へ移動している最中に社長から辞令の電話があり、波に揺られた船の上で話を聞いていたことは今でも覚えていますよ(笑)。社長のITへの想い入れを感じて、いままでの辞令よりも気を引き締めた感じがしたと思いますね。
“部付け”課長としての新たな始まり
異動先は、当時データアナリティクスやIT企画などの業務を含んでいたマーケティング部でした。新規開発は何を実施するかが決まってなかったので、ひとまず私には部下はおらず、いわゆる“部付け”課長として、2018年4月からITキャリアがスタートしました。
まず取り組んだのは、スコアリング※へのAI導入の可能性を検討することでした。有名なAIベンチャーのAI技術を使ったスコアリング結果と既存スコアリングの精度を比較するということを行いました。同時に、チャットボットをAI化するために、自然言語処理を用いたボットへの変更を進めました。
その結果ですが、AIスコアリングについては既存の方が精度が高く、導入は見送りになってしまったんです。AIチャットボットは導入できましたが、チャットボットへの質問は会話的よりも「単語」で伝えるお客さまが多かったこともあり、AIが効果を発揮できないまま回答精度の改善はなされませんでした。
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これらについては劇的に何かが変わった、ということはなかったのですが、導入前後から検証を繰り返していたおかげで、既存システムとの比較からメリットやデメリットがわかるようになり、サービスや業務の推進のために、今後どのようなシステムがあると良いのかに気づけましたね。
そして、このあとは大小問わずIT分野における挑戦が本格化していったんです。ハッカソンの立ち上げや既存申込フォームの見直しなどを実施したり…、あとはアレクサをデスクに2台並べて、みんながいるシーンとしたオフィス内で「アレクサ~」と一人で語りかけたりもしてましたよ(笑)。
※ スコアリング…金銭の支払い能力のみならず、年齢や学歴などの個人属性とサービスの利用情報などの消費傾向を照らし合わせ、個々の信用力を数値化すること。
第一回ハッカソン
いまアイフルグループは中期経営計画を掲げていて「IT企業への変革」を目指して、ITの内製化や専門人材の確保などに取り組んでいます。私が異動した時から、そのような潮流があり、アイフルグループのIT活動を対外的にPRする必要もあったかなと思いますね。
そして、私が次に言われた急な一言が「山下さん、ハッカソンやってください」。
これは役員からの一言でしたね(笑)。アイフルグループと学生の交流を持つ機会として現在も続いているハッカソンですが、当時は社内ですら「ハッカソン」という言葉に馴染みがなかったんです。社内の理解をもらうために説明ばかりして予算の確保をしていました (笑)。
ハッカソンの企画は、もとは経営層からの発案で始まり、どんな内容で実施するのかも手探りで進めていました。ハッカソンといえば、何かプログラムを構築するイメージがありますよね? でも、うちのグループは膨大な顧客データなどを扱うので、テーマはやっぱりデータを活用して課題解決を提案するデータハッカソンだよね、という話になったんです。それで、イベントはアイフル本社がある京都府内の国立大・京都大学で開催し、京大の学生さんたちを集めて、第一回を開催したんです。
いざ、蓋を開けてみると、学生さんたちの優秀さに驚きの連続でした。
このあとに繋がるご縁は、この第一回ハッカソンから生まれていて、その後の取り組みにも影響を与えるきっかけになったイベントだったんじゃないかなと、今となって思いますね。
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後半では、ハッカソンでのご縁から生まれた申込フォームの再開発や山下さんのこれまでのあゆみを振り返ったうえでの想いをご紹介します。
ハッカソンの詳しい内容についても、ご紹介していきます。